東日本大震災を考える(鑑定士からの視点)その1

東日本大震災から早くも1カ月が経過しました。この間度重なる余震活動に耐えながら被災地の方々は懸命に立ち上がろうとされていることに心より敬意とエールを送りたいと思います。

この度の地殻変動が引き起こした影響は国民経済に計り知れない影響を与えており、今後も与え続けると思われますが、不動産の経済価値にどのような影響を与えていくのか考えずにはおれません。

今この時期にコメントすることが不適切の謗りを受けるかもしれませんが、様々な角度から検討してみたいと思います。

(1)建物の耐震性の問題

  一度でも震度5以上の強い地震を経験した建物とそうでない建物が同じ強度を保てるのかという問題があります。

  東京都区部でも震度5強を観測したわけですが、古いビルであれ新しいビルであれ、外見上何も変らなくても建物は相当なダメージを受けているのではないかと思われます。

  そうなると設計上の耐震強度を引続き維持できているかどうかという検証を行う必要はないのか、行わない場合に震度5強の地震を経験した建物について、全く地震の影響がないという前提で捉えて良いのかということに対して、国、特に国土交通省及び建設業界は応える必要があるのではないでしょうか。

(2)岩手・仙台・福島の地盤にズレが生じたエリアの建物の再建築について

牡鹿半島で東南東に5.3m程度移動し、約1.2m沈下しており、東北の太平洋沿岸はいずれの場所も多少の差はあれメートル単位で土地が移動しています。

今後の復興のなかで、各種建物の再建築を行っていくうえで、どこに建て直すかという点について、相当な調査と整理が必要と思われます。

移動したのが一部のエリアではなく日本列島そのものが移動しているので、既存の境界標がベースとなってくると思われますが、各種交通インフラの再建設の過程において、仮に元通りの場所に道路・鉄道・水路等を復元したとしても元々あった土地に収まるという保証はありません。

何故なら、今後の安全性を考慮して、道路を拡幅したり、通る位置をずらしたりということが現実には起きてくるからです。

また、今回の震災と津波で壊滅的な被害にあった地区は大体的な都市計画により再開発が進むものと思われるが、被害が壊滅的でなく家屋が全半壊程度で残った地区は被災者の思い出が残っており、直ぐの取壊して撤去することが困難な状況にあります。

今後ともさらにこのテーマについては、逐次コメントを追加してまいります。