借地契約における諸問題について 1/3

土地の賃貸借契約内容の確認にあたって注意すべき事項

土地の賃貸借契約の契約内容を確認する上で、注意すべき点として次のものがあります。

[1]契約書の有・無と記載内容

契約書の内容は千差万別であり、契約書の記載内容、契約締結の経緯、契約の更新状況、地代の改定状況について、契約書の文言だけでなく契約当事者の話を十分に聴取して調査する必要があります。

(1) 既往契約期間が長ければ長いほど口頭による契約の比率が高い。

(2) 法人よりも個人の契約の方が口頭の契約の比率が高い。

(3) 契約書があっても更新していなかったり、表記が間違っていたりする等文言通りに解釈できない場合がある。

[2]契約の目的

(1) 建物所有目的かそれ以外の目的かどうか

これは、借地借家法の適用を受ける賃貸借契約か民法の賃貸借の規定(第601条~621条)の適用を受ける賃貸借なのかの違いが発生します。

専ら耕作や建物以外の工作物の所有を目的とする場合は借地借家法の適用はありませんし、借地上に建物を所有していてもそれが借地の主たる目的でない場合には借地借家法の適用はありません。

借地の主たる目的が何であるかは、地上権または賃借権の設定契約の解釈の問題です。

建物所有を目的とするかどうかは当事者にとって重大な利害関係のある問題ですので、通常は設定契約中に明文でその旨を明らかにすることが多い訳ですが、現実には明確に規定していない契約書も多いのが実態です。

最終的には対象地の利用の推移のみならず、周辺土地の利用状況等をも斟酌して契約締結の趣旨を分析する必要があります。

借地法上の「建物」とは何か

(定義1) 借地法は、借地人が借地上の建物を基盤として日常生活や事業活動を行うという生活関係を、居住の安定という観点から保護しようとするものであるから、「建物」と認定するためには構造的、機能的に生活関係の基盤としてふさわしいものであることが必要となる。(定義2) 工作物(民法265条)の概念より狭く、ある程度の永続性を有し、住居、事務所、店舗、物の貯蔵その他の用途に供され、屋蓋周壁等その用途に相応した構造を有し、原則として独立して登記され得るものであり、区分所有権の目的となる建物の一部分もこれに含まれる。

(判断根拠)

社会通念および借地法の立法趣旨に照らして判断されるものであり、建物の独立性を有しない一部分の場合も建物に該当する場合があります。

建物についての登記の有無若しくは家屋台帳への記載の有無によって借地法の適用が影響を受けることはありません。しかしながら、建物について未登記の場合には第三者に対する対抗力は認められないことになります。

(構造)

屋根、側壁等を備え、人が出入りして、そこで居住、営業、物の貯蔵等の活動することができるものであることが構造上の要件となります。

(具体例)

a.ガソリンスタンドのキャノピー、広告塔、テレビ塔等の工作物(但し、一体の敷地の中には建物といえる部分も含まれ、ガソリンスタンドに関しては全体として建物と判断し得る場合もある)

b.丸太を打ち込み、トタンで周囲を囲み上部を覆った工作物

c.丸太を立てて上方をトタンで覆った掘立式の車庫

d.鶏舎・犬舎であっても木造の合掌を骨組みとした屋根を有し、周りに太い柱を有するときは、その全てが全体として建物の効用を全うしている場合

(2) 建物所有目的の場合には、建物の構造・用途に関する事項が明記されているか

イ.堅固建物か非堅固建物か

平成4年7月31日以前の契約であれば旧借地法が適用されるので、建物が堅固な建物に当たるかどうかは、建物の耐久性を中心として耐震性、耐火性および解体の難易度を考慮して判定しなければなりません。

(具体例)

a.堅固建物

石造、土蔵、煉瓦造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、ブロック造、重量鉄骨造

b.非堅固建物

木造、軽量鉄骨造

ロ.建物の用途は何か

地上建物の用途が何であるかは、まさに借地契約の最大の目的がここにありますので、建物の構造とも相俟って借地契約の当事者の意思を忖度する上でも非常に重要な事項です。

しかしながら、契約書に明確に地上建物の用途を記載していない場合も多く、また契約の途中から建物用途が変更となる場合もあり、用法遵守義務とも絡んで判断する必要があります。

(3) 建物所有目的ではない場合には、土地の使用目的が明記されているかどうか。

借地の主な目的が別にあって、これに付随して借地の一部に建物を建てたような   場合には借地法は適用されない場合もあります。

(借地法の適用がない具体例)

a.ゴルフ場、ゴルフ練習場

b.バッティング練習場

c.駐車場、自動車運送業のための自動車置場、中古車販売のための展示場

d.商品置場、農産物を集荷・競売りのための農産物置場

e.ガードレール塗装工場のための作業場・資材置場、露天造船用地

f.養魚場

g.バスターミナルにおけるバスの出入り口

[3]契約の範囲及び数量

契約書がある場合であっても、契約書の数量は登記簿数量(古い契約は平米ではなく坪に換算されている場合が多い)、実測数量、概測数量等と様々である。

口頭と文書との違いに関わらず、賃貸借契約上の数量と当該借地の位置は、実際に借地として使用している範囲並びに数量とは異なる場合がありますので、注意が必要です。

(借地法の適用範囲)

建物の存立に不可欠の部分としての敷地の範囲は、建物の使用目的と敷地の形状、  使用方法などから社会通念上判定することになります。

(具体例)

イ.原則

住居等の庭として使用し、塀や垣根をめぐらしているような場合には、それによって囲まれている部分が敷地となり、その敷地には借地法が適用されます。

ロ.例外

a.自動車学校を経営するために、自動車学校建築のための敷地として自動車運転教習コース用地を含めて土地を賃借したというケースでは、自動車学校の運営上相当広い教習コースと机上教育のための校舎、事務所等が不可欠で、両者が一体となってはじめて自動車学校経営の目的を達しうるので、その経営のための借地は建物所有を目的とするものにあたり、その借地全体について借地法の適用があるとされます。

b.借地が数筆の土地にまたがり、その1筆の土地上にだけ建物が建築されている場合に、数筆の土地全部を一体として建物の敷地として使用していると認められるときは、その土地全部に借地法が適用されます。

c.A地とB地とを別の貸主から借り、A地に建物(仕入れセンター)を建て、これに隣接するB地をA地と一体として(仕入れセンターへの進入路、駐車場、物品置場として)使用している場合には、B地についても借地法が適用されます。

d.1筆の土地に数頭の建物が建っている場合には、その一棟の建物のための借地権は、その建物を所有、使用のために現に使用されている範囲の土地についてのみ存在します。

[4]確認に要する資料

土地・建物の全部事項証明書(閉鎖登記簿)、法務局備付の公図、建物図面・各階平面図、土地賃貸借契約書、土地賃貸借予約契約書、同覚書、役場税務課備付の土地・建物の課税証明書