借地契約における諸問題について 2/3

賃借料(地代)の設定に関しての基本的な検討方法

[1]従前の地代の設定方法

 (1) 米(現物)で定める場合

 (2) 米(金銭に換算)で定める場合(1坪当たり何升何合何勺)

 (3) 地区で標準的な地代を定めてあり、それに準拠してる場合

 (4) 地主側が設定した地代で定める場合

 (5) 当事者間で協議して定める場合

 (6) その他

[2]地代の改定の状況

  地代の改定状況はその契約当事者によって千差万別であり、その具体例は以下のとおりです。

 (1) 契約書に2年若しくは3年毎に見直しを行う旨が触れられている場合に契約書に従って増減額請求等を行う場合

 (2) 契約書がなく、定期若しくは不定期に地主の値上げの申し入れを受ける度に改定を行う場合

 (3) 地主が土地の管理に熱心ではなく、値上げを行わず、ほとんど横這いで推移している場合。

 (4) 地代に関して先代同士は仲良くあまりお互いうるさいことを言わずに推移してきたのが、どちらか一方が世代交代したことを契機として毎年のように値上げを求める場合。

 (5) 長期に紛争状態が続いており、地代の供託が長期間に及んでいる場合。

[3]地代水準の把握の仕方

  地代の水準の定まり方は地域の実情により異なります。

 (1) 地区によっては、いわゆる「村年貢」を定めているところがありますので、これが継続地代の水準を規定している場合があります(村年貢型)。

  但し、市街地的な場所ではなく、農家集落や昔ながらの既成住宅地域等に当てはまる場合が多い。

 (2) 市街地的形態の地域にあっては、上記の考え方が残る地域と当該地域の主たる地主の地代設定に影響を受ける場合があります(プライスリーダー型)。

  この場合には、数人の地主に話しを聞けば大体の地区の相場が判明するので、それを一つの基準に判断が可能となります。

 (3) 市街地的形態の中でもいわゆる商業地域に関しては、偏に商業収益性によりその土地の地代負担力が定まりますので、地上建物の利用者の収益力により地代に格差が生じて来ます。

   但し、類似性のある業種・業態は一定の地代負担力に収斂する傾向がありますので、地代の実例を収集することによって標準的な地代設定の把握が可能となります。

 (4) 郊外のショッピングセンターのように中心部からの方面並びに距離に関係なく一定の地代水準が形成されるケース

 (5) 当該地域の賃貸物件の家賃水準も地代を推し量る上で重要な材料となります。

[4]地代の設定の目安

 (1) 土地価格の坪単価÷1000=月額地代の坪単価の最低ライン

  例えば土地価格が30万円/坪の場合に月額地代は300円/坪となる。これは、要するに300円×12ヶ月÷30万円=1.2%という意味であり、継続地代の平均的な利回りは凡そ1.5%~2.5%程度の範囲にあるので、現行の地代が高いのか低いのかの第一義的判断材料として活用できます。

 (2) 公租公課の2~4倍=年額地代

  これは、借地非訟事件や判例等の積み重ねの中で、また、地代契約の実際において、さらには国税庁の「通常の地代」水準の考え方にも取り入れられている方式で、日本全国で普遍的に妥当し得る一つの基準となっている。

  但し、注意しなければならないのは、公租公課(固定資産税と都市計画税)の課税標準額の特例であります。

  住宅用地については非住宅用地とは異なり、税額面で優遇されており、課税標準額が小規模住宅用地であれば6分の1、その他の住宅用地であれば3分の1となることから、税額もその分減額されることになります。

  したがって、上記の方式は住宅用地の特例を受けている場合にはそのまま適用できません。

 (3) 土地価格の坪単価÷100=青空駐車場の1台あたり月額使用料

  約100坪の土地に16台の車が止められる前提で、フル稼働した場合の利回りを計算すると約1.9%となります。

  土地の賃貸借契約における地代は、非常に長期に亘り当事者間の力関係を反映して地域の水準を形成するに至らない場合が多いと言えます。

  しかしながら、駐車場契約はいわゆる民法上の賃借権であり、かつ、比較的短期のものが多く、使用料の設定に当たっても近隣の相場を無視した価格設定はできないことから、借地権の地代を判定する上で有力な根拠となるとともにいわば上限値的性格を有するものといえる。